2015年1月17日土曜日

神戸在住

昨年末に関西を旅行した際、旅館で見たテレビで新春の映画特集をやっていた。年末年始に上映される映画の紹介がされていたのだが、放映していたのが神戸のサンテレビジョンだったこともあって、この「神戸在住」も紹介されていた。


「阪神・淡路大震災から20年・・・。震災を知らない女子大生たちが織りなす、神戸へのオマージュ。」と番組のサイトでは紹介されているのだが、その通り20才前後の女子大生が神戸を舞台に自らの生き方を模索するというストーリーだ。

阪神・淡路大震災のことを正面から描いた映画ではないが、舞台が神戸ということもあり、震災が起きた土地として神戸が紹介される。

震災20年を迎える本日、サンテレビジョンでドラマとして放映された。また劇場公開版の映画も兵庫を中心とした映画館でも上映されるというので、都内で唯一上映している渋谷に観に行ってきた。

正直、映画としては微妙だった。見ているものに冷や汗をかかせかねない主人公たちの演技やわざとらしい台詞、現実離れした設定などが気になってしまった。神戸が関係無かったらおそらく見なかったろう。竹下景子や田中美里という脇役陣の演技になるたびに救われた思いをした。

と、酷評してしまったが、20年前の震災を想起させる神戸の美しい今と20才前後の女子大生の人生への戸惑いが重なり合う展開自体は悪くない。震災の逸話が織り込まれたところでは思わず泣きそうになってしまった。隣にいた女性は神戸出身なのだろうか、彼女も泣いていた。



「大丈夫だった? きつかったら、途中で出ていいよ。平気?」

昨年末の関西旅行では、阪神・淡路大震災で得た教訓を後世に継承するために設立された「人と防災未来センター」も見学したのだが、そこの4階で1.17(阪神・淡路大震災が発生した日)を追体験する 「1.17シアター」を見終わり、次の「大震災ホール」に移ったとき、一緒のグループにいた若い女の子が友人にこう声をかけられていた。

1.17シアターはテーマパークほどではないが、迫力のある音と映像で発災当時の状況を再現する。そのため、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの恐れがある人などを心配してであろう、具合が悪くなったら途中退出して良いことが冒頭に説明されていた。

この女の子たちは誰だろう。

最初は阪神・淡路の被災者かと思った。だが、神戸在住の主人公のような年齢の女の子たちだ。おそらくまだ生まれていなかったろう。親から話を聞いたりしているのだろうか。


メリケンパークの一角に神戸港震災メモリアルパークという、震災当時の状況を保存している場所がある。当時はおそらくこの写真の奥にある高速道路も大きな被害を受けていたのだろう。

神戸在住の中でも東遊園地にある「1.17希望の灯」に主人公たちが手を合わせるシーンがある。

このような震災遺構や語り部、人と防災未来センターのような施設、これらは記憶を風化させず、教訓を後世に残していくために用意された。


人と防災未来センターはフロアーごとにテーマが決まっているが、2階はボランティアのスタッフが防災についてワークショップ形式で教えてくれるフロアーだ。

私が2階を歩いていると、さっきの女の子たちとボランティアスタッフの方々が話しているのが聴こえてきた。

「この子たち、東北から来たんだって」
あるスタッフの方が仲間のスタッフに声をかけていた。

「へー、そう。大変だったなぁ。ご家族も被害に遭われた?」
「ええ、みんな流されちゃいました」

そうか。東日本大震災の被災者の子たちだったのか。

東日本大震災もいつかは、阪神・淡路大震災と同じように、その後に生まれた子どもたちが住民の半分を占めるような時代が来るだろう。

自分が直接経験したことでなくとも、その記憶をいろいろな形で紡いでいく。

人と防災未来センターや震災遺構、そして神戸在住のようなドラマ/映画。形はいろいろあるけれど、しっかりとつないでいきたい。



神戸在住はコミックが原作となっている。この原作はずっと絶版状態になっていたが、ドラマのサイトに載っている情報によると、今回全10巻が再販され、兵庫を中心に入手できるようになっているらしい。コミックはまたテイストが違うようだが、一度読んでみたい。
神戸在住(1)
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