2011年1月3日月曜日

外国語学習の科学



外資系人生を歩んでいるのだが、その割にちっとも英語がうまくならない。謙遜しているのではなく、どっかで進歩が止まってしまったようにしか思えない。もしくはモチベーションが維持出来ていない。

外資系に入ったのもの偶然のようなものだから、学生時代などはもっとひどかった。英語教育に力を入れている中高一貫校に入ったので、英語に対する拒否反応こそは無かったものの、実際には文法も語彙数もリスニングもスピーキングもすべて実践にはほど遠かった。

それでもどうにか外資系でクビにならない程度に仕事できているのは、それなりに努力してきたからだ。ずぼらな性格を自分でもわかっているので、英語を聞いて話さなければいけない環境に自分を追い込むことで英語力の向上を目指してきた。週に1回は海外のオフィスとテレコンをやるようにしてみたり。

これは「道具的動機付け」と呼ばれるもので、実利的な目的のために努力することだ。

一方、「統合的動機付け」と呼ばれるものもあり、これはその言語が用いられている文化に対する興味などから外国語学習に取り組むことだ。

このように外国語学習の習得に向けての研究の状況をまとめたのが、「外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か」だ。

この本は言う。「国際的な競争力を強化しなければいけない状況の中で、外国語でのコミュニケーション能力向上というのも戦略的に重要なものである。果たして、国はどの程度それに対して投資を行っているか」と。

たしかに、今の中高での英語教育は私のころと大差ない。私が卒業した学校はネイティブの先生が常にいたし、NHKのラジオ講座などを使ったリスニングとスピーキングの授業なども組み込まれていた。ほかにもこのような取り組みを始めていた学校はいくつもあったことと思う。

だが、それから20年。当時と今とでどの程度日本人の英語力は向上したのだろうか。諸外国と比べてどうか。必ずしも成功しているとは言えないだろう。

これがビジネスだったら、どっかで抜本的な見直しが入っているはずだ。20年も成果のあがらない事業をやり続けるほど悠長な市場はどこにもない。

国際競争力強化と言いながら、そのために一番必要なソフトスキル面の強化を怠っているのではないだろうか。

この本では、第二言語(SLA)習得のための研究が紹介され、そこからわかった現時点でのもっとも効果的な学習方法が解説される。「科学」とタイトルにつけられているだけあり、仮説と実証に基づく科学的なアプローチであり、言われてみると思い当たることも多い。

すでに何人かの人にお勧めしている(で、その人たちは購入しているようだ)が、この本はお勧め。読み物としても面白い。