2009年12月29日火曜日

ウエハースの椅子

新潮文庫から発売されている「ウエハースの椅子」。しばらく前に電車の中吊り広告で「『神様のボート』に続く傑作恋愛小説」と書かれていたのを見てからずっと気になっていた。



後で知ったんだけど、文庫化されたのはハルキ文庫がもともと最初で、今回は新潮文庫から出されたものらしい。良く分からないのだけれど、こういうことは良くあるんだろうか。私はハルキ文庫のものをブックオフで購入して読んだ。

ウエハースの椅子 (新潮文庫)
ウエハースの椅子 (新潮文庫)

神様のボート」は江國香織さんの小説で私が最も好きなものだ。傑作なので、読んだことのある人も多いと思うが、恋愛の持つ狂気を江國さん独特の世界観で書いたものだ。読んでいて苦しくなるし、読み終わった後に怖くなるし、好きな小説なんだけれど、誰にでも安易に勧められるものではない。

この小説と比較されるということで期待して読んだが、そこまでの傑作とは思えなかった。好きな人には悪いのだが。

「神様のボート」と同じく恋愛と狂気が書かれているのであるが、書かれている狂気が「神様のボート」には及ばない。恋愛についても「神様のボート」に書かれているような「骨ごと溶けるような恋」とは言い難い。なにせ、「神様のボート」ではあの人を思い続けて、引越しを続けて生きていくのだから、その狂った恋に勝てるものはそう無い。

いなくなってしまった人に囚われる恋ほど狂気を感じるものはない。幸せかもしれないし、もはや存在しないものを愛し続けることは不幸なのかもしれない。

そういえば、飛行機の中で「きみがぼくを見つけた日」(原題: The Time Traveler's Wife.なんだってこんな邦題なんだろう)を観たのだけれど、これも最初から「囚われて」しまった人の愛の話だ。時間旅行する男が自分の幼少の時から現れ、そして彼が死んだ後も彼がまだ生きていた過去から現れる彼と再会する(あぁ、ややこしい)。映画の出来としては、「ゴースト/ニューヨークの幻」と同じくらい大衆的なお涙頂戴映画なんだけれども、生から死への非可逆な時間の流れと愛というものの組み合わせとしては良く出来ていたと思う。Twitterでも書いたのだけれど、萩尾望都さんのマリーンと作品にも通じるものがある。

萩尾望都さんのマリーンについては 天才・萩尾望都の描いたテニス少年の物語 を参照。やばい。また読みたくなってしまった。

あれ、なんの話だっけ。

きみがぼくを見つけた日 [DVD]
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