2009年10月12日月曜日

アイデン&ティティ 32

あの「アイデン&ティティ」に第3部があるとは知らなかった。教えてくれたヴィレッジヴァンガード吉祥寺店、ありがとう。

アイデン&ティティを知ったのは2003年。ちょうど映画公開の少し前だ。おそらく映画公開に合わせたのだろう書店で文庫「アイデン&ティティ―24歳/27歳」が平積みになっているのを買った。バンドブームが去った後もロックであることにこだわり続ける主人公を描いたコミックだ。ちょうど自分がバンドをしていたころと重なるし、社会との折り合いのつけ方(結局、つけれていないのだが)に悩むところなどにもシンクロするものを感じて、のめりこんでしまった。

アイデン&ティティ―24歳/27歳 (角川文庫)
アイデン&ティティ―24歳/27歳 (角川文庫)

映画は、今何年だ!?と言いたくなるようなというか、ATGちっくなというかな感じの映画なのだが、監督田口トモロヲ/脚本宮藤官九郎というこれまたすごいペアで作られた。興行的なことを考えた場合の映画の出来としては、今ひとつのところもあるかもしれないが、私としては、むしろ一般に迎合していないようなところに惚れたという感じだ。また、このブログでも何回か言っていると思うが、私が日本の三大薄幸女優の1人と認定した麻生久美子さんの演技にもうっとりする(主人公の彼女役で登場)。

アイデン&ティティ [DVD]
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今回買ったのは、このアイデン&ティティの第3部となる「アイデン&ティティ32―アイデン&ティティ 第3部」。CD売上が伸びないために、カバーをやることになった主人公のバンドとタレントとして活躍する友人の癌発病。そのような中で、再度自分たちの道を見つめ直すというストーリー。この友人が池田貴族をモデルにしていることはみうらじゅん氏も「青春ノイローゼ」で明らかにしている。

アイデン&ティティ32―アイデン&ティティ 第3部
アイデン&ティティ32―アイデン&ティティ 第3部

この第3部も前の2作と同じく、ロックを通じて生きることとは何かを問いかけている。青臭くなるようなテーマだが、ボブディランだし、みうらじゅんだし、ロックなのだから、何を言っても許される。みうらじゅんのへたうまなコミックなのもまた良い。

この第3部でも、映画では麻生久美子さんが演じた主人公の彼女の存在感が大きい。登場する箇所はそれほど多くないのだが、姉のように母のように、そして恋人というよりも同志として、ロックの神様のボブディランとともに主人公を支える。前作で彼女がニューヨークに留学する際に主人公に残した手紙の一節がこの第3部でも出てくる。
私のために
君のために
私と君のために
私たちの生きている事は
実験
前例もマニュアルも
ない
やれる事を探す
実験
ふさわしい事を見つける
実験
誰もやった事のない
私と君のための実験
こんな生き方を私もしてみたい。