2009年5月25日月曜日

ウェブはバカと暇人のもの

久しぶりにネット関連の本を読んだ。「ウェブはバカと暇人のもの」というタイトルが微妙に座りが悪い。インパクトはあるのだけれど、なんかもうちょっと言葉としてリズム良く出来なかったのだろうか。このリズムに乗れなかったモヤモヤのようなものが最後まで解けなかった。

ネット関連の本というと、「将来成長が見込めるネット vs. 旧メディア」とか「未来のITのあるべき姿であるクラウドコンピューティング vs. レガシーコンピューティングとなる既存システム」というような形で、今後はネットが中心になるという論調のものが多い。私もそれを信じており、そのような将来が実現されるように公私に努力しているのだが、この本はそのような通り一辺な論調を一貫して否定するもの。

著者もこの業界の人なので、ネットの将来性を否定しているわけではないのだが、「既存メディアを凌駕する」などの美辞麗句を並べたようなものからは程遠い、サイト運営者としての生々しい経験を元にした、ネットの現状を暴露する。

実際の利用者や業界で手を動かしている人から見ると、すべて当たり前のことであるが、書籍として書かれているネット関連の本の多くが、泥臭い現状については触れないか、もしくは現状に触れたとしても、未来の社会基盤の萌芽となりうるようなエピソードの対比として触れられるだけである。

どこまで著者が本気でこの本を書いたのかわからないが、アンチテーゼとしてはこの本は傑作だと思う。PV至上主義。そのためにはジャーナリズムも何もなく、いかに民衆がクリックしたくなるような見出しと内容にするか。ソーシャル機能などをつけたがために、コメント欄でのクレーマー対応に追われるはめになる。すべて事実だ。バラ色のネットの話は、著者の言う、「コンサルタント・研究者・ITジャーナリスト」の書籍を読むと良いので、それらを一通り読んだら、この本を読むと良いだろう。今のメディアがネットに軸足を移すまで、まずはネットでの収益を上げなければいけないのだから、それにはこのくらいの生々しく、泥臭い話をきちんと理解しておいたほうが良い。読んだ上で、とてもじゃないがネットなどに自分の貴重なコンテンツを載せられないと思うのならば、サイトを閉じてしまえば良いだろう。数年後にどうなっているか知らないが。

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)